直子の部屋

笑ったり泣いたり踊ったり暴れたり推し事したり。

8/14 第十五回 東京四派精鋭そろい踏みの会 @横浜にぎわい座

横浜にぎわい座の東京四派精鋭そろい踏みの会へ行ってきました。

大喜利が名物の人気の会です。完売だとか。

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番組:
 開口一番 孝行糖 生ぼう
 磯の鮑 三遊亭兼好
 マサコ ~春風亭昇太作~ 立川生志
 がまの油 春風亭一之輔
ー仲入りー
 ホームランボール 林家木久蔵
 船徳 三遊亭遊雀
 大喜利 一同

 

暑い。風はうれしいが日傘にはキツイ。
また遅刻かと思われたのが滑り込みセーフ。そんな調子で着席。

生ぼうさんの開口一番、元気に調子よく声も響いて気分よく聴けた。
気持ち良い孝行糖。

先日「上屋敷周辺に住まう家臣は鳴りもの禁止だった」というのを知ったので、水戸様のお屋敷前で「鳴り物は相ならん」が聴いててわかりやすくなった。むしろ今時「静かにしなさい」という躾を聞く機会がないから、六尺棒でたたかれるが通じなくなるのかな、余計なお世話か。

四派精鋭一番手は兼好師匠。落語を自由研究する子どもさんのマクラ、インタビューの質問も娘さんのエピソードも楽しいけれど、客席でメモする子どもが一番コワい。そのままメモする大人になって客席にいる・・・という怪談か妖怪が脳内に出現した。

磯の鮑は短めだけど笑い所がたくさんあるので大好きだ。人気の会で席がかなり後ろになったけど威力は変わらず大笑いした。

「人をだますのに尾が要らないから花魁(おいらん)」にどよめく客席。毎回人気の会、といいながらかなり人が入れ替わっているのかな?と感じた。

大門前で提灯に灯りがともるのをまって走り出す姿、開演直前のもぎり通過した自分みたいで余計におかしい。時に聞き流してしまうけど、幅の広い階段を上ったところで「ひきつけで目を回さない!」が今日は妙に目を回しそうに見えて笑った。やっぱり師匠大好きだな。

 

盛り上がった客席にどうくるか生志師匠。
客席の反応からか、恒例なのか、この会が始まったいきさつをご説明。この会にこれると生志師匠に心で感謝している。他にはない会はいろいろ思い浮かぶけれど、このメンバーで続いているのがうれしいから。「始まった時は一之輔くんはまだ二つ目、初回の前座が宮治くん。追い抜かれたね」とボヤキ芸できっちり笑点メンバーになる人間見抜いてましたよアピール。オリンピック開催地パリをこき下ろすが、ゼンダマンTシャツに反応したパリのディズニーにいたアニメオタクだけは賞賛する。ゼンダマン懐かしくて笑ったけどあの会場で知ってて笑えた人どれぐらいいたのかな。生志師匠らしい言い回しが楽しい。私の立川流のイメージ源流は生志師匠のマクラかもしれない。

暑いから怪談噺でもやりたいんだけど、稽古で怖くなっちゃうからこんな怪談をと「マサコ」を。聴いている間、知ってる話なんだけど誰で聴いたんだっけがぐるぐる。セオリー通りなのに怖い。そして客席の反応が良すぎて怖いポイントで怖いよりビックリが超えてくる。新作なんだけど落語で、生志師匠で新作聴いたら、古典も聴きたくなるね、という余韻を味わった。

 

お次は一之輔師匠登場。
いつもの通り気だるい自然体。オリンピック期間にアスリートモードになられた模様。でも見ている時は酔ってたから、ブレイキンとスケートボード選手の名前があちこちする。公園や街中で迷惑行為のイメージがあったストリートなダンスや遊びがオリンピック競技になって驚いてる世代感は共感しかない。

「がまの油」の言い立てさすが。で、その先は?が一之輔師匠の魅力なんだろう。家でテレビにアイスが望ましいのにこの暑い中横浜まで来た師匠。暑いとイライラするよね!という噺ぶっ壊れモードで酔っ払いというよりカタコトの日本語を話す外国人みたいな口上に入る。「芸が荒れてるとか言いやがって!」「アンケートなんて演者は読まない!」とか叫んでる。白紙を切る下りに正楽師匠が登場。お盆だな。お囃子三味線が入る。やめてくれと止めようとすると太鼓も入る。素敵なインサートコラボは体ごと御簾内の平謝りで止まる。暴れるといっても前に兼好師匠が形容した「勝新みたいな可愛さ」を持つ師匠。ふにゃっと挟む笑顔で暴言を許されながら言いたい放題、のち時々反撃される隙。荒れてるようで、切れた腕はきっちり痛々しくサゲて仲入り。一之輔師匠によれば、このあと精鋭でない人が出てくるらしい。

仲入り明けに木久蔵師匠登場!この会の面白さの要といっても良い。それぞれが精鋭でも木久蔵師匠がいるかいないかで全然違う。お父様の木久扇師匠笑点卒業の節目、実は僕も「がまの油」を(ネタで)持っている、と鈴本の高座で演った時の話、稽古をつけてくれた金馬(金扇)師匠の話が飛び出す。木久蔵師匠の顔と名前は知っているのに、聞いたことがない話がまだまだある。

オリンピックも見ちゃうけど学生時代していた陸上と野球が好きだと野球の話に。
球場でホームランボールを取ったことがある幸運の話から「ホームランボール」

「ホームランボール」ーーーーーー

8位の景品でもらった野球のチケットで観戦に来ている夫婦。旦那さんは野球が大好きで、奥さんとの出会いも野球場。ホームランボールを取るのを失敗して運ばれ、球場でビールの売り子をしていた今の奥さんと出会った。そんな思い出を話していると目の前にホームランボールが飛んでくる。今度こそとキャッチしたホームランボールは大好きな選手の100号記念のボールで大喜びするが、目の前にそのボールを羨ましそうに見ている子供がいる。奥さんも周りの客も子供にあげるべきだという雰囲気で仕方ないとあげてしまった。

後から大きな会社の経営者らしき人物がやってきた。ホームランボールを譲ってくれたら1000万円を引換えにすると耳打ちする。とたんに子供にあげなさいと言っていた奥さんが子供から取り返してお金が入れば、借金も返せて自分が行きたいヨーロッパ旅行にも行けると言い出す。この旦那は前に干物バーガーの商売で失敗して借金を作っていて、奥さんも海外旅行を諦めていたのだ。

子どもの所に返してもらいに行くと、母親が出てきて実は子どもは体が弱く入院生活でようやく外出できることになってここへ来たという。ボールは子をなんとか説得してお返ししますと言うが、やっぱり返さなくていい、お子さんにあげますと言って席にもどる。奥さんも納得したが、旦那の運でまたホームランボールを取れたら、子どもにあげた100号記念のボールと交換すればいい!と言っていると、こんどは奥さんの方にホームランボールが飛んできた!そんなボールを取ったことがない奥さんは出会った時の旦那のように取り損なって気絶。目が覚めると、そのあとそのボールは旦那が取って無事子どもとボールも交換し、1000万円を手に入れたという。

借金を返してヨーロッパ旅行へ行ける!と奥さんが思ったその時、旦那は「いいこと思いついたんだ!刺し身バーガーを作ったら大流行りすると思うんだよね!」

ーーーーーー

急に思いついて「ホームランボール」の話の筋を書いてみました。
木久蔵師匠が作った話?かどうかもわからないんですけど、静岡によく釣りに行かれている木久蔵師匠のインスタグラムを見ていたからか、「(あじの)干物バーガー」「刺し身バーガー」のチョイスが師匠らしく聞こえました。

長めに演られているな、と思ったら遊雀師匠がやってきてマクラなしで、どころでない勢いで噺に入りました。「船徳」だとはわかったけど、なぜそこから???という巻きの体制。すぐに解説が入りました。

「一之輔師匠が掛けもちでこの後寄席がある、なのに木久蔵師匠が5分長くしゃべりやがった、蹴飛ばしてやろうかと(略)」

遊雀師匠、船徳を7分にしました。体感では5分聞いたかと思うほど。お腹が痛いほど笑った遊雀師匠の船徳を脳内再現して客の想像力9割5分体制で挑みましたが、7分の船徳が残念無念。遊雀師匠らしく、船徳でしたけど、頭がついて行かず。楽しい会には時々こういう魔物がいます。一之輔師匠に扉番してもらって一服してた頃はそんなことになるとは思ってなかったですよね、師匠!炎天下のベランダで船頭気分になって「船徳かな」って思ったんですよね!言ってて自分がむなしい。

初めて遊雀師匠を見た方には強く強くお伝えしたい、「遊雀師匠のたっぷりの船徳は一度聴いたほうがいいよ!絶対!」

しばし準備タイムがあって幕があがると浴衣姿の師匠方が並んで恒例の大喜利

自己紹介の謎かけ、笑って聞いたけど記憶から抜けている。

お題は夏の高校野球にちなんで「こんな高校生は嫌だ!」とお盆にちなんで「メンバーのご先祖になって一言」

「こんな高校生は嫌だ!」で木久蔵師匠の辛い嫌だったエピソードが。野球部時代に自分の打席で応援歌に笑点のテーマソングを演奏されたという。場は盛り上がるけどこういうエピソード本気で笑えない。王楽師匠のエピソード思い出す。いまはそれが魅力になっていても、嫌だった時代あるよね、という一面を垣間見たり。

「メンバーのご先祖になって一言」は途中からご先祖ではない一言に展開。上手の遊雀師匠、木久蔵師匠のズレ具合が今回も楽しい。木久蔵師匠が「一之輔師匠独演会三席はやめてほしい」というボヤキから落語協会理事となった一之輔師匠の苦言の反撃を受けて、いつも朗らかな若旦那の木久蔵師匠が珍しく拗ねて戻れない顔に。
本当に寄席に遅れると我に返る一之輔師匠でお開き。

帰りのロビーには生志師匠と木久蔵師匠が登場。
生志師匠はオリジナル手ぬぐいにサイン、木久蔵師匠は生志師匠の手ぬぐいと書籍販売の売り子をされていた。木久蔵師匠は近くに居るととても華やかで明るい雰囲気がよくわかる。この会に来るようになって木久蔵師匠の和ませる力を知った気がする。

 

楽しくたくさん笑ったものの、暑さか酸欠か落ち着かないのでゆっくり帰ることにして、2階の展示コーナーを見てチラシももらってきた。

にぎわい座をはじめ、横浜ではほぼ毎月兼好師匠の会があるのでまだ手にしていないチラシもゲットできた。

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楽しい会の魔物、ご商売のことにとやかくいう立場ではないのだけれど、あれはないわとかそれはどうなのかとか疲れもあってかしばらく引きずった。

結局つまらなくなるようなことはごめんなだけで、たらればを考えたってどうしようもない。

どの師匠も高座見れて良かったのは間違いない。

魔物がいない会に行こっと。