6月国立演芸場寄席へ行ってきました。
会場は紀尾井ホール 小ホール。
行ける日取りの中で好きな番組を選んだ結果、大雨の日に。ホテルニューオータニ前の上品な紀尾井ホールへ長靴を履いて出かける事態に。おまけに降りる予定の四ツ谷駅を通る中央線が人身事故で遅延。
行ったことがあるホールとはいえ、会場も変わって「寄席にフラッと遊びに行く」雰囲気にはなかなかさせてもらえないですね。
四ツ谷駅から紀尾井ホールの道のりは、聖イグナチオ教会、上智大学とソフィア通り沿いの土手の緑と紫陽花を眺めながらで好きな道です。
行きはなかなかの雨でした。じっくり撮る余裕はありませんが、景色写真を思い出に。
国立演芸場が閉場した後、他の劇場で「国立演芸場寄席」が始まりました。
閉場前から国立演芸場さんのXで発信されているポストは公演や発売の情報が出るのですが、定席は日ごとの番組がツリー形式で投稿されています。
SNSでも出演者がチェックしやすくて、毎回定席の情報はチェックしていたのですが、チケットを取って行くのは閉場後初めて。国立演芸場の主催公演はいつも天女マークの入ったチケットを演芸場のチケットセンターで発券するのが習慣だったので、コンビニ発券から不思議な気持ち。他の劇場で見ることも抵抗あったのかな。
「国立演芸場へ行く」こと自体が楽しみだったんだと改めて思います。
大雨の予報で早めに出たおかげで、私にしては珍しく開場前に到着。
なじみの国立演芸場の提灯にホッとしつつも、幟もよく見ると室内で使えるものに変わっています。工夫して雰囲気作りされていました。
紀尾井ホールのロビーの景色に国立演芸場の公演チラシが不思議な心持ち
スタンプカードも作り直しました
本日の番組もロビーで確認できます
国立演芸場寄席で紀尾井ホール。
席に着いても頭が混乱しているのか、なんだかそわそわします。
二番太鼓が鳴って、良く知った声の開演前アナウンスが流れても、変な感じ。
幕が開いて出てきた前座さん。見たことある。枝平さん。先月赤坂会館の稽古場の「文生噺」で見た方です。高座は楽しいのですがなぜか余計に頭が混乱。
余談ですが、最近の前座さんは前座時代から型破り的な高座で落ち着かせてくれません。高座返しに出てきた別の前座さんも仕草や表情が気になってしまいました。でもこれはよくあることなので個人的な意見です。数年で落語の世界もすっかり個性の時代になったと前座さんを見て一番感じます。こちらが歳を取ったんでしょうね。
前半は久しぶりに拝見する方が目白押し。
伊織さんの熊の皮はよく聞く展開とちょっと違ってそれもあり。
左龍師匠の初天神は金坊が小憎たらしくて境内の描写が面白かった。
岡大介さん寄席では初めて!歌も情報も以外と知られていないもの多いので、最後は手拍子も出ていましたが、「なんだかオーディションを受けてるみたいですね」という一言が客席の様子を表しています。
とても真面目に明治の演説から来ているルーツを伝える芸風はすんなり今に馴染みにくいですが、寄席では酒場で弾き語りされる雰囲気をもっと見てみたい。
久しぶりを楽しみにしていた駒治師匠。仕草がさらにクセ強キャラになっていました。鶯の鳴く町、良い話。ややボヤキに聴こえる鉄オタマクラはあるあるで面白かった。SNSを見る限り、鉄キャラで邁進されるのかと思っていたので意外な内容。人気商売はキャラが大事かつ印象がついてしまうと難しいところもあるので、マクラの話が洒落込みのボヤキとして、駒治師匠への今後の差し入れ事情がどうなるか、次に聴ける機会を楽しみに。
ロビーで「初代国立演芸場の公演記録」を購入しました。
公演記録なので、国立演芸場が閉場する時にはあまり関心がありませんでした。
その後再整備のことやら建てられるまでの物語やら調べるようになって、「初代国立劇場の記憶」が良かったこともあり手にしました。
職場だった時代にお世話になった職員さんの顔も影響大でしたが。
仲入りに開いてみると、98%公演記録の文字のみです。一瞬後悔しかけました。欲しい人は変人ですね(笑)
2%の写真は国立演芸場の写真。建物の中はもちろん、普段見れない舞台袖や正月の設え、開場当時のチラシなども載っています。ロビーの写真は私が無くなって残念に思っていた売店あおやぎさんが営業してた頃のものでうれしい。
中で見たことがない緞帳の写真がありました。歌川広重「東海道五十三次之内白須賀」です。開場当時の緞帳、葛飾北斎「神奈川沖浪裏」は開場当時の資料で、歌川広重「東海道五十三次之内箱根」は談志ひとり会の映像で、閉場まであった葛飾北斎「凱風快晴」はもちろん直接見ていました。44年で緞帳が四代 代替わりしていたんですね。
赤坂経済新聞(2009.09.09)
国立演芸場に新緞帳「赤富士」-披露記念に落語界重鎮が出席
公演記録の大半は知らない時代ですが、目に留まった記録もありました。
緊急事態宣言で公演が中止となった時期です。
当時劇場で仕事をしていた身としては、状況をとても厳しく感じていた時期で、再開に至るまでの経験は貴重でしたが楽しいものではなく、客席で思い出してしみじみしてしまいました。公演が中止されていた間は、閉場まで無事公演が行われて、外の会場で寄席が開催されて客席で笑っていられるとは想像もつかなかった。
花形演芸会や国立名人会など定席ではない特別な公演は出演者と演目も載っていました。行った会も行けなかった会も、後で手に取って振り返ることができる記録集になりそうです。
話はもどって仲入り後。
待ってました志う歌師匠!(笑)
主任の歌武蔵師匠、志う歌師匠、駒治師匠が揃っていたので行ってみようと思っていたのですが、志う歌師匠は三遊亭圓朝を落語にされていて勝手に親近感を持っています。
器用すぎる師匠なので、マクラでオペラ、人形浄瑠璃の話題に義太夫ネタをしてくれるのか!?と少し期待してしまいました。最近関心が高いだけなのですが。
「がまの油」は別の意味でさすが。言い立てはもちろん、酔った口上で振り回す抜けば玉散る氷の刃で腕が切れてしまう様子が見ているだけで痛かった(汗)
お次は龍玉師匠。普段聴く機会が少ない師匠ですが、雲助一門の渋声で聴く「夏泥」は凄みがあって返って可笑しい。低温に寝不足のウトウトもしつつ、寄席の緩急が面白い瞬間がありました。
トリ前のヒザ(ヒザ代わり)は江戸家猫八さん。猫八襲名の時も国立演芸場でウグイスの鳴き声を浴びせてくれましたが、紀尾井ホールのウグイスは初めて。響きが違う!
襲名興行の時からマイ落語袋につけていた猫八キーホルダーにニヤッとする締めは、実は数日前にラジオでも聴いていて、それもまた生で聴けたうれしさが。
真打ち競演▽おぼん・こぼん 江戸家猫八 柳家三三|NHK ラジオ第一
6月15日(土)午後1:05放送 2024年6月22日(土)午後1:55配信終了
トリは歌武蔵師匠。先日「新婚さんいらっしゃい!」を見てしまったので、完全に落語の中に取り入れたと聞いたジャンボリミッキー歌い待ち。歌われませんでしたけど(笑)
師匠はご結婚されて嫁武蔵、姫武蔵ご一家になって、ご家族の話題が増えましたね。
私は寄席よりも圧倒的に「落語教育委員会」のおひとりとして、ホール落語で聴く機会が多いのですが、高座での師匠の「ザ・お約束」で笑わせる形は、寄席でこそ面白さがよくわかるように思いました。「鹿政談」も聴いたことがありますが、ホールで聴いた演目も寄席でも聴いてみたくなりました。ジャンボリーミッキーも待ちますが(笑)
国立演芸場寄席の番組は出演者が前座さんを入れても10人で真打の師匠は持ち時間が少しゆったりめ。
新宿末広亭や浅草演芸ホールの昼席に比べると1時間近く短く、公演時間が同じ位の上野鈴本演芸場や池袋演芸場に比べても演者さんの数は少ないのですが、料金はお安い。周りが繁華街ではないのは紀尾井ホールに代わっても同じではありますが、お目当てを楽しむ寄席と考えれば、席が選べる指定席で手頃なお値段は魅力です。
定席はスターがいて指定席を販売している寄席興行とは顔付けの雰囲気はまったく違いますが、推し活や他の寄席の風情とは別の良さを感じます。
国立演芸場のお正月興行は毎年楽しみにしていました。今年は閉場直後で年始には開催されませんでしたが、少しずつ季節感のある国立演芸場の雰囲気が外での寄席でも見れたらいいなと思います。
平日の昼ということもあって、直前に買っても席が選べる。しかも見やすい席を。
推し活をしている人間としては由々しき事態だと思っていた時期があるのですが、今ではそれも好きな風情です。
毎日まばらな客席ではいくら国立でもやっていけませんが、ホール落語とも違う、若手が人を呼ぶ賑やかな寄席とも違う雰囲気が、私がまた行きたくなる国立演芸場寄席の好きな所かもしれません。
とはいえ、客席はほぼ同世代以下の人はおらず。学生時代もそんな場所にいる人間でしたが、好きな穴場としてまたチェックしてはたまに行きたいと思います。
帰りは雨が小降りになっている時間で無事帰還。