ひさしぶりに赤坂会館の文生噺へ
ここは初回に伺って9割方話についていけない、まるでわからなかった会だ。
文生師匠のエピソードがちょっとしたお勉強に思えて2回目を躊躇したら、3回目は席主がファシリテーターではなく昭和40年代の大須語りに登壇していると聞いた。それでもどうするか決めきれず直前に連絡して伺う。
当日ふらっと行く寄席でもなく
前々から楽しみにする推しの会でもなく
多分聞いてもわからない話をたのしみにするという趣向と呼ぶに相応しい会
着いて始まって座談に多数の人がメモを取るのを見て、あ、書くもの持ってきてないや…と諦める。相当珍しい会。
着くなり受け取った講義資料のような大須演芸場最盛期の番組、余一会の顔触れ、それに対しての席主のコメントに講義前から爆笑。
始まってみれば資料を更に上回る席主が知る大須演芸場の環境やエピソード、時代話。予習のつもりはなく面白く読見直していた「席亭志願」シリーズが役に立つ。
なぜこんな名古屋の大須演芸場の昭和40年代の話を東京の赤坂で聞いているのか。
漫画でも見たことない異次元転生の会だ。
しかも席主の例えからして現代のお笑いにもアンテナは立っていて、わかる人にわかればいいという話が楽しい。
席主がここまで独断場にしてこの後どうなるのか?というところで当時からずっと変わらず大須に出ている文生師匠が登場。文雀師匠が豊かな記憶に素直に脱線していく文生師匠の道案内役。異例の芸協から落語協会への移籍話が聞けるのか?という流れで聞けたり聞けなかったり、行きつ戻りつがとても楽しい時間だった。
文生師匠が二ツ目の欣治時代、小金治師匠のエピソード、移籍前夜、文朝師匠のことなど。
小金治師匠はテレビで売れてしまった後の落語の音源を何度も聴いたことがあって、文生師匠の話は一緒になってうれしい気持ちになった。
自由研究で大正昭和と落語協会や落語芸術協会の経緯も以前より知ったこともあって、以前より話の輪郭が理解できた。
なんだかんだで売れているかどうかが色んなところで良くも悪くも影響するのが、大変だろうがホワイト過ぎる今より違和感がない気もする。ただ色気話は今はもう聞いて笑うのが難しくなってきた。
話は尽きず、時間を延長したものの、移籍話の核心はやはりすんなり出ないと見えて(笑)楽しく行きつ戻りつの座談が終わり短い仲入りに。
席主も文生師匠も話が楽しくここから落語を聴く準備にならないうちに文雀師匠が滅多に聴かないうばすて山を。こういうことがあるから落語は面白い。
そして堂々の袴姿で登場した文生師匠は他で稽古をつけてもらったのに寝床は文楽師匠が焼きついていると半ば文楽師匠が降りたような調子で寝床に入る。
旦那の義太夫が外し方まで含めてお見事で楽しい。思わず音無しで拍手してしまうほど。その後まさかのシャンソンまで。愛の讃歌。越路吹雪の話が出たが美輪明宏さんに時折重なる。
今日のは「シャンソンと寝床」と仰って丁寧に丁寧にご挨拶される。
結局落語が素敵な会だった。
自由研究が面白くなって静岡の寄席を調べたりするようになったのはもしかして堂々と東京でこんな会をする席亭の影響があるのではないかと今日は思ってしまった。
けれども文生師匠の話はちっとも名古屋の話ではなく落語も万全。
やはり異次元転生型の不思議な落語会だった。
次は未定だそうだが、その方が自然と思えてしまう。前々から聞く準備をしていくタイプの会ではなく、異次元にうっかり転生して辿り着く感じでまた行ってみたい。
追記
以前に行った「文生噺」のことも記事にしていました。
今回「席主」とした方は「K氏」になってますね。