直子の探求時間

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寿・三遊亭王楽改メ七代目三遊亭円楽 襲名披露興行 ~両国寄席7days~ 五日目

先日また両国寄席へ行ってきました。今回は円楽師匠襲名のお披露目興行。
お祝いで後ろ幕のあるお江戸両国亭、たくさんのお客さんで熱気がありました。

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寿・三遊亭王楽改メ七代目三遊亭円楽 襲名披露興行
~両国寄席7days~ 五日目

一、ん廻し けろよん
一、狸札 楽大
一、本膳 朝橘
一、宗論 道楽
一、紀州 兼好
一、稲川 圓橘

ー仲入りー

一、口上 円楽 べ瓶 太福 圓橘 道楽 兼好
一、地蔵の散髪 ベ瓶
一、即興円楽一代記 地べたの二人おかず交換 太福
一、お見立て 円楽 

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錦笑亭満堂師匠の真打昇進披露興行も行列だったのを思い出して早めに出発。時間を勘違いしたおかげで開場前に到着。思ったより列が短いと並んだころから開場までにかなり後ろに長く伸びた。開場後は予約してる人からだったので事前予約正解。前のブログ見ると両国寄席初めて予約したと思っていたけど、前もしてた。

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入口の一番太鼓はげんきさん。どんどんどーんとこいの音と円楽師匠の幟。

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席を確保して円楽師匠の襲名口上書きをゲット。豪華な師匠方のお言葉を開演まで読むのも披露目らしい。
混雑しそうなので早々に行ったのがよかったのか、王楽時代のクリアファイルをいただいた。クリアファイルがあったのか。円楽師匠のオリジナルイラストは王楽時代から健在だった模様。

 

開口一番はけろよんさん。鮮やかな後ろ幕。開幕から普段の両国寄席と雰囲気が違う。「ん廻し」は兄弟子の兼太郎さんでよく聴いたけど言い立ての調子が全然違う。

続いての楽大師匠は”化ける”のが縁起が良い落語「狸札」。お次の朝橘師匠は「本膳」。楽大師匠の丸いお顔で明るく恩返ししにきた狸を演ると楽しい。朝橘師匠は、両国寄席初めての人に「普段も来てね」を強めにアピール。真剣な形相で芋の煮っ転がしを箸で突いたり、肘鉄を食らわす仕草もアピールも朝橘師匠らしく楽しかった。

ただ、前座さん後半あたりからずっと聞こえる補聴器の音漏れハウリングがずっと続いてこの日はこの時間は集中が途切れ途切れになって残念でもあった。

次に出てきた道楽師匠がマクラの途中で音に気づいて前座さんへ繋ぐ。道楽師匠の話から客席が暫く静かになって後音が消えた。疑っては悪いけれど、自分の列の右端で寝ていた方が起きていたのでその方かもしれない。残念ながら至近距離で音が鳴ったり携帯のマナーモードの振動が気になっても止めるのは難しい。声をかけて間違ったり、トラブルになるのはごめんだし、そもそも高座中に指摘するのは勇気がいる。マナーモードや携帯の音がいつまでも止まらないと、気にならない人はそういうものかと苛立ち半分悲しさ半分。とりあえず自分は開演前に携帯の電源を切る、補聴器をするようになったら寝るなら電源切ろうと思う。歳を取らなくても疲れ切ってて客席で寝たらいびきをかく可能性もあるし、客席で寝ている間の音漏れなんて気づけない。

道楽師匠の「宗論」は兼好師匠に比べるとあっさりしているのに「汝、信ずるところの主、イエス・キリストは・・・」のくだりがやっぱり面白い。道楽師匠の低音だと小言を言う父親が少し違う像になる。

次に続くのは兼好師匠。七代目円楽の披露目の話題から長く続いた江戸時代の七代将軍の話に。七代将軍家継は幼くして将軍となったが僅か数年で亡くなった。子が授かる筈もなく将軍家本家血筋が絶え、八代将軍の座は御三家から選ばれたと「紀州」へ。

中学時代の先生が粋な人でテストに「八代将軍は?」の問いに「徳川吉宗」の他に「暴れん坊将軍」でも丸をくれたとか。師匠は真面目に「暴れん坊将軍・徳田新之助」と回答したのには二重丸をつけてくれたそうだ。どこまで本当かは貴方次第。

紀州」は自らが次の将軍に違いないと自信を持つ御三家筆頭尾州候は早朝登城の途中に聞いた鍛冶屋の「トンテンカン」という鎚の音が「天下取る」に聞こえる、という単純な話だけれど、師匠の軽快な「トンテンカ~ン」と「天下取~る」が気持ちがいい。仕事の移動で付き添った好楽師匠を「派手なシャツ着てるな」と思っていたら「派手なシャツだなと思ってんだろう」と言われて「いえ、似合ってます!」と返したら「羽田発何時だ、って聞いてんだ」の聞き間違えだった。思い込みの聞き間違いってありますよね、といきなりエピソード挟んでくるのが師匠流。好楽師匠を巻き添えにして笑わせるのは一門得。

仲入りは圓橘師匠。円楽師匠のエピソードは口上で、と「稲川」を。師匠が暮らす深川は相撲部屋が多いそうだ。ちょうど始まった春場所は大阪なので大阪の相撲(力士)の落語が聞けるのはいいねえ、と思えるようになった。強いけれど東に贔屓がいない相撲の稲川と、大阪で見た稲川に惚れ込み河岸仲間と賭けをしておこもさん(物乞い)に扮して会いに来る魚河岸の男のやりとり。渋いお声の人情噺で魚河岸の化粧廻しが見てみたくなった。

休憩時間は物販がにぎわったらしい。なんとなくはしゃいで近い席の方達とも自然と言葉を交わす。こういう客席の雰囲気は好き。近頃は普段はもう少し静かにしているのでもう少し元気が欲しい。

休憩明け前に「口上の挨拶の間は撮影OK」の声掛けあり。

f:id:entsunagi705:20250315164407j:imageこの日の襲名披露口上は上手から圓橘師匠、道楽師匠、兼好師匠、主役の円楽師匠、上方の笑福亭べ瓶師匠、朝橘師匠、司会の楽大師匠という顔ぶれ。

両国寄席の口上は良くも悪くも褒めない口上。落語界の口上自体近頃は肩肘張ることはあまりなく、笑いが多い。落語家さんならではの笑わせたい気持ちと照れもあるのかもしれない。両国寄席は圓楽一門会のホームということもあり、演者さんの仲の良さが良く出るアットホームさで客席まで包まれる。

両国寄席には時々出演しているべ瓶師匠。「円楽師匠を悪く言う人はだえれもいない!」と言いかけて一瞬口が止まった。

これには兼好師匠も何とも言えず笑ってらっしゃった。

王楽時代に初めて高座を拝見した時から、円楽師匠は同じ日に出ていれば必ず兼好師匠を一度けなしイジりされていた。兼好師匠も楽屋じゃなくても高座でも多分なにかは言ってて、もはやその応酬はお約束で楽しみのひとつ。

べ瓶師匠のご挨拶を受けて、悪口はほどほどにしようかと笑わせた兼好師匠。弟子入りした時、好楽師匠のご家族で落語に微塵の興味さえなかった時から見てきて、今円楽に成るのを目の当たりにして不思議な気持ちと率直な言葉。円楽の名を背負ったからには一門を引っ張っていく存在に間違いなくなるだろうと普段の応酬を見ているからか、本当のお兄さんのようなご挨拶。

圓橘師匠は円楽師匠が落語に関心を持った場に居合わせた映画好き仲間。圓橘師匠の独演会に映画評論家が来るから見に来たら、と誘ったのがきっかけなんだとか。映画好きで俳優もやってみたいという円楽師匠を知ってか、今後の方向性をアクター(俳優)かアーティスト(プロデューサーだったかも)のどちらかと問うと、円楽師匠が「両方で」と答えてコケてみせる圓橘師匠。円楽師匠、話聞いてなかったんじゃ(笑)

口上最後は指名された圓橘師匠がべ瓶師匠を追指名。それならと全員で一度練習しての大阪締めに。近頃時々祝いの場ですることが増えて慣れてきた。

後に上がったのはべ瓶師匠。両国寄席にも時々上がっていて、円楽師匠の襲名直前にもYouTubeで特集配信をたっぷり出すぐらい圓楽一門が大好きとのこと。東西落語家約1000人の中でこの落語をするのは自分1人だけなので祝いの席には不似合いながら、と「地蔵の散髪」を。

後から調べたら新作な訳ではなく上方落語でレアなことからバレ噺だという人もいるらしい。某師匠に東京ではやらない方がいいと言われたとか。エロい方でない汚い方の破廉恥といえばそういえなくもないけど、聞いて想像する遊びと考えるとそこまでではなく、べ瓶師匠の演り方がむしろ変な下ネタにならない楽しさもある。無駄毛に悩んで脱毛テープとか使ったことある人なら共感しながら笑える落語。ただ確かにお地蔵さんにまたがるなんてバチが当たるぞと小言を言う大家さんが出てきそうな話。

ヒザとして出てきたのは浪曲玉川太福先生と曲師の玉川みね子師匠。ヒザとして見るのは初めてかも。

以前は両国寄席にも出ていて久しぶりとのこと。先日の新宿末広亭のトリも話題になったが、お忙しそうだ。六代目の円楽師匠にお世話になった、七代目にもお世話になりたいところ。ただ、実は玉川一門はお父様の好楽師匠に大変にお世話になっているいう。一門にゆかり深い方の店が好楽師匠のお宅に近くよく通うお店がで、玉川一門の経済を支えていると言っても過言でないのだそうだ。

トリを引き立てるヒザなので重いものはと思っていたら、両国亭の外で出会ったお客さんから「一代記楽しみにしてます!」と言われたそうだ。朝橘師匠が真打に昇進した時にかけた朝橘師匠の一代記を聴いた方らしいが、今回は作っていないのでと即興で出番前に作ったと「円楽一代記」を一節。さすがに作り込んだ方ではなく笑わせるネタ。今後聴けるかもしれないことを楽しみに笑った。

ここで客席に浪曲の手練れが多いことに気が付く。お祝いで慣れない人も多いから拍手が激しいのかと思っていたけど、拍手だけでなく高座に声が掛かる数がめちゃくちゃ多い。太福先生を見に来た方も多かったのかもしれない。近頃歌舞伎の大向うも煙たがられると聞く。浪曲も楽しめるけど本格的な浪曲席に行く程は詳しくないので落語とちがう客筋感に少しビックリ。演芸全体が盛り上がるのはいいなと思うけれど、昔は講談席、浪曲席、色物席と別れていたというのは雰囲気がやっぱり違うのだろうか。

続いて太福先生ではお馴染みの「地べたの二人 おかず交換」を軽めに。登場したのは斎藤さんと家入一夫さん。これはもちろん円楽師匠だ。気のせいかから揚げ弁当のタルタルに興奮気味の斎藤さんに返す様子が円楽師匠っぽくて可笑しい。そして途中から一瞬金井くんがダブルキャストで登場気味で気づいた太福先生の様子がらしくて楽しい。「円楽一代記」も家入一夫版の「おかず交換」も改めてたっぷり聴いてみたい。

トリの円楽師匠は高座へ上がるなり「だれも褒めないんだもん」で笑わせる。落語は「お見立て」。喜瀬川と杢兵衛大尽の間に入る喜助が軽くて泣き顔の茶の間合いを計る様子が可笑しい。山谷の寺で見繕った墓に「希鏡啓心大姉」と樹木希林さんの戒名が入る。まもなく春分、個人的余談で春分の彼岸に登った七面山という山で聞いた樹木希林さんのエピソードを思い出した。どの師匠が入れたのだろう。映画好きの円楽師匠オリジナルか。

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帰り道は楽しい気持ちと普段の寄席とは違う興奮と酸欠。
勢いブログを書くのは難しいけれど、両国寄席は楽しい。また行こう。