目の前に現れたことに飛びつくのが悪い癖。
昨晩も突然お題解明を始めてしまった。
今回のお題
#キュレーターバトル に参戦中。今回ご紹介する #イチ推し生きもの は歌川国芳が描く、加藤清正と戦う虎たち(画中の文章では豹ですが)。その仕草は虎というより、完全にネコ。しかも清正に襲いかかることなく、かなりリラックスしています。国芳らしい愛らしい描写です。※現在展示していません pic.twitter.com/7A8E8upQvm
— 太田記念美術館 Ota Memorial Museum of Art (@ukiyoeota) 2023年5月29日
太田記念美術館は学生時分から好きな浮世絵専門の美術館。最近はTwitterやnoteを通じて楽しく浮世絵を知ることができるコンテンツ発信で楽しませてもらっています。
浮世絵は美術品のように見ることもできるけれど、出版物として考えると時代が違う分読み解き甲斐があるコンテンツ。この投稿は虎(豹)が完全にネコで、猫好きで有名な国芳画。ほんとだ、猫みたい、カワイイ。画中の「可樂戯言」という文字が目に入る。
ん?可樂?三笑亭?
お題を見つけてしまって学生時代に齧った変体仮名を思い出しながら読み解き。
今は変体仮名を勉強できるアプリがあったりするし、可楽師匠と国芳が生きた時代を照らし合わせることもできる。文字の読み解きと参照資料の検索で遊びが止まらない。
可樂戯言とは噺家の可楽師匠でしょうか?なにやらこんなに虎がいるのに戦いもせず和んでいる様子を面白がっているような。
— 直子 (@Entsunagi705) 2023年5月29日
わかったこと
- 結局なんとなく読み解けただけ
- 豹は昔は「雌の虎」だと考えられていた
- 毛唐人という言葉を知った
- 合っているかもわからない
結局答えがあって解いているわけではないので「なんとなくこんなかんじ?」というオチなのだけれど、放置していた変体仮名アプリで調べたりして、やれるだけやってみたのが面白かった。ひらがなの成り立ちが一筋縄ではないのを再確認できたし、ひらがなや単語ひとつ、イマジネーションを使う必要があるのが面白い。言葉のとらえ方については、現代では差別用語と区分さえているものも、おそらく感触として差別に至るまでの別の使い方があった、というニュアンスがリアルで楽しい。
推測で読み解くから自由。遊び。
- 結局なんとなく読み解けただけの「ゆる解き」の回答
四苦八苦して読み解いた内容がこちら。
けとう人
♪(節)こっちに
豹が三ツあっても
目本(目元)のつよい人がやりを
つかんでかんがへてゐるから
いよいよおらがほうの
王ハにげ(迯)ずハなるまい
可樂戯言
組み合わせて使ったアプリ
どうしても読めなかった文字があって「みを」を初めて使ってみたら、撮った画像からAI解析してくれて進化にびっくり。更にすごそうな有料アプリも発見したり、自由研究はかどる世界になってました。ただ、基本自力とか照らし合わせるほうが完全な読み間違いがわかるので楽しい。本当に嫌だった変体仮名の厳しい授業してくれた先生に再度感謝。
- 豹は昔は「雌の虎」だと考えられていた
虎と豹は姿形が似ているし、大陸から伝わった生き物としてなんとなく混同していた時代があるのではないかと思って検索すると、左甚五郎が出てきました。豹が「雌の虎」と考えられていたことは比較的ポピュラーなようです。
- 毛唐人という言葉を知った
今は使わない言葉ですが「この、毛唐が」みたいなセリフは芝居かなにかで聞いたことがありました。検索上は差別用語として説明されているものが多かった印象。
同じように以前は耳にした南蛮人と同じ様な流れのようで、しっくりきたのはWikipedia
唐人は頭が「唐モロコシ」のヒゲように金髪や紅毛だったので、毛唐と呼ばれていた。
どちらかというと昔の中国の人が被ってたイメージで毛がついてる帽子とか被り物があって、わかりやすい。カンフー映画の影響かな。
- 合っているかもわからない
この読み解きは合っているのかどうか判断する人がいません。正解不明。
そして画像からの読み解きなので、画像内の情報からのクイズです。全体図や前後がわからないので、読み解いた部分だけでなく、見当違いの思い込みで熱中してるお馬鹿さんになってる可能性も大なのです。今回のお題も、枠は団扇の形なのですが、右下に別の絵が描かれているので、他の動物や他の一節が描かれている気もします。描かれているのは加藤清正と三頭の虎ということですが、読み解いた文字が仮に合っているとするなら、清正は出てこないし毛唐人でもないし、文脈も若干ズレがあるので別のものを組み合わせていると思われます。
- 発見があった
正解はわからないものの、時々急にその気になる変体仮名読み解き。
学生時代は美術館に展示されていた『源氏物語絵巻』を友達と一緒に直に読めたり、民俗学のフィールドワークでは神社の絵馬調査で漢字以外の仮名をスラスラ読んで先生を驚かせたりしたのを思い出します。ちゃっと勉強してた。外国語と同じ様に、使わないと忘れる。
すっかり忘れてしまって自力で読み解けなかった文字もまだまだあるし、もっとわかりやすい判じ絵だとか双六なんかでチャレンジしてみたくなったり。
今回はすごく便利な新しい道具も見つかって、昔の文字というだけで読むのをあきらめていた人もゲーム的に解いて楽しめる時代きたと思う。
美術展で一度にたくさんの作品を見ると疲れてしまう。特に人気がある展示や大規模なコレクションだと、楽しい楽しい、けれど人の山を縫って、待って、知らぬ間に長時間並んで立って歩いている。展覧会に行くと想像以上に疲れる、と思うようになって好きだったのに足が遠のいているのも本当。浮世絵でも絵画でも、画像ですぐ確認できたり、解説を見ることができる時代になって、実際の作品を目で見たときにしか感じ取れないことと、肉眼で見ても、ふらりと美術館に行っても味わえない情報にもアクセスできる。実際展示予定作品を見て楽しめると、実物も見たくなる。
新しい道具、アプリ、大学や研究機関で開発された便利なオープンソースを見つけて使うことも可能。個人で調べ上げてネットの世界に上げられている方の研究成果も、想像を超えて先輩を発見できる機会になるのも楽しい。
〇参考になったサイト
落語にハマったことをきっかけに、伝統芸能や浮世絵の見方がすごく変わった。
会場に近く展示数も少ないようなマニアックな展覧会が心地良い。
思えば学生時代に回っていたような場所も同じようにマニアックで、貴重な内容で、でも無料だったりして、大きな美術館と一緒に回ってきても、印象は格別だった。
展示内容は違えど、関心につながる企画展は楽しい。離れていると思っていた関心事が繋がると尚楽しい。伝統に関することは当時あったものがアーカイブ(記録)で残されているから、当時の人たちの日常と今生きてる自分と重なるとなんだかうれしくなる。
国芳と可楽のキーワードで発見した「浮世絵文献資料館」は、実際は二人の関係性がわかったわけでもなく、読み解きのヒントになったわけでもない。ただ、最近見た企画展「口絵・挿絵でたどる演芸速記本」で、浮世絵は作品そのものがブロマイドのように売れたばかりではなく、出版物に花を添えわかりやすくイメージさせる挿絵の立場にもなるものだと意識したばかりだったこともあり、絵師が仕事を通してあらゆる業界を知ることになることを更にイメージできて楽しかった。
企画展「口絵・挿絵でたどる演芸速記本」は1階演芸資料展示室で開催中です📚
— 国立演芸場 (@nt_engei) 2023年5月23日
📅~8月20日(日)
🆓入場無料
詳細はこちら🔍https://t.co/Ddh76R9C14 pic.twitter.com/AYNK2J8YJ2
結局興味を持たせてくれた可樂師匠の一節だと思った戯言は、本当かどうかも分からない、何と言っていたのかも判然ともしない。節とともに笑いで消えるようなうわごとだったのかしらん。さんざん読み解きに熱中して、ブログまで書いてから改めて見ても、清正公を和ませてるネコ三匹にしか見えない。可楽師匠は猫好きだったのかなあ。
#キュレーターバトル に参戦中。今回ご紹介する #イチ推し生きもの は歌川国芳が描く、加藤清正と戦う虎たち(画中の文章では豹ですが)。その仕草は虎というより、完全にネコ。しかも清正に襲いかかることなく、かなりリラックスしています。国芳らしい愛らしい描写です。※現在展示していません pic.twitter.com/7A8E8upQvm
— 太田記念美術館 Ota Memorial Museum of Art (@ukiyoeota) 2023年5月29日